ことばの発達が遅い子どもについて

次男は小さな頃からことばの発達が極端に遅い子どもでした。
今でも言葉によるコミュニケーションは、ほとんどできません。
さいころは療育センターに通い、障害児のお母さん達が作るサークルにも入っていました。
サークルでは、母親達と言語聴覚士さんとで話し合いをしたり、専門家の話を聞いたりしながら、子どものことばの発達について学びました。
そこで、当時の事を思い出し、ことばの発達が遅い子どもについて、良いと思われる対処法や、私が思った事などをまとめてみようと思いました。

子どものことばの発達には、前提条件が必要です。
その前提条件とは、

①聴こえや麻痺などの生理学的なもの
②知能の発達
③対人、コミュニケーション関係

以上の3つです。ことばの発達を語る前に、まずはこの3つの前提条件について考える必要があるのです。

息子の事で相談した時、療育センターでは最初に耳の検査をしました。
そこで何らかの異常が見られた時は、耳に問題があるという事で、適切な治療が行なわれたと思います。
でも、そうではありませんでした。
その後、精神科の診察、言語聴覚士さんや心理判定員さんなどの指導を受ける事になりました。
サークルのお子さん達は、言語発達遅滞や精神発達遅滞などの診断を受けた子が多かったようです。
でも息子の場合、これにも当てはまりませんでした。
原因がはっきりしない為、具体的な治療法はなく、当面は普段の生活の中で対処していくしかなさそうという感じでした。

ことばの発達に遅れが見られる子どもにとって、どのように対処するのが良い事なのか?
それはとても難しい問題です。

大切な事はいくつかありますが、その中で1番大切なのは、「まわりの大人がプラス思考を持つ」という事です。
例えば、子どもが壁に落書きをした時などは、「壁を汚された。」と、考えるのではなく、「描く事ができるようになった。」と、考えるのです。
描く事ができるなんてすごいね!と言って、今度は紙に描いてもらい、できたら思いっきり褒めてあげる、というような対処をするのです。
ちなみに褒める事は、「ピグマリオン効果」と言って、子どもの発達に良い影響を与えるそうです。
そのためにも、「以前はできなかった事ができるようになった。」と、視点を変えて、プラス思考の考え方をする事が重要になります。

とはいえ、汚れた壁を綺麗にするのは大変です。
どうしてもして欲しくない事は、物理的に出来ないように、前もってなにかしらの工夫をしておくのもひとつの手です。

そのほかに学んだ事と言えば、「言う事を聞いてもらいたい時は、どうすれば良いのか?」と、いう事です。
その質問には言語聴覚士さんがアドバイスして下さいました。
そのアドバイスとは、「子どもの様子をよく観察し、子どものタイミングに合わせた働きかけをすると良い」という事です。

多動の子どもでも永遠に走り続けられる訳ではありません。
走り回っている子どもを無理矢理捕まえるよりは、走り回る子どもとの距離を測りながら、その子が止まったり、何かに気をとられたりした瞬間を見計らって言葉かけをした方が効果的なのです。
走り回っている時や、何かに熱中している時に子どもに話しかけても聞いてもらえません。
子どもの様子をよく観察していると、集中が途切れる瞬間などが、自然と分かるようになってきます。
そのタイミングで、子どもの興味を引くような働きかけをすると、少しずつコミュニケーションがとれるようになってくるのではないかと思います。

また、規則正しい生活習慣は、ことばの発達にも効果があります。
生活のリズムが整っていると、次に起こる出来事の予測ができて安心できるのです。
リラックスした、快い気持ちでいる事によって、脳に良い物質が出るそうです。
さらに、生活習慣に合わせて、ことばを意識して使ってみます。
例えば、朝食の時に子どもの好きなジュースを見せて、「コップを持ってきて。」と、言ってみるのです。
すると子どもは「ジュースとコップ」の関係を学びます。
子どもの関心の高い物と、他の物とを組み合わせる事によって、物と物との関係を学ぶ事ができるのです。
ほかに、「本は本棚に」「おもちゃはおもちゃ箱に」など、片付けを通じて物と物との関係を教えます。
物と物との関係を知る事はとても重要です。こういったお手伝いや片付けは、しつけとは別です。
言葉の発達のために良い事なのです。

これらのことは、当時、私が学んだ事の一部です。
他にもいろいろな事を学びましたが、説明が難しかったり、考えをまとめる事が難しかったりで、素人の私にはこれだけで、もうヘトヘトでした。
ですが実際は、知識がいくらあっても、それだけでは十分ではないと思っています。
子どもの世話をする人が、明るく元気でいられる事が大切で、実際のところ、知識よりも大切な事ではないかと私は思うのです。

子どもに障害があると分かった時、自分の責任ではないかと悩んだり、先が見えない事を不安に思ったというお母さんが何人かいました。
子どもの障害の事で自分を責めるのは間違っているし、先の事が分からないのは、障害の有無に関わらず、みんな同じです。
先が分からない事を不安に感じていると、余計に子育てが大変に感じるのではないかと思います。

子どものことばの発達には、世話をする大人が元気で、プラス思考ができる事が1番大切なのです。
どうしても元気がでない時、プラス思考になれない時には、まわりの人に頼っても良いと思います。
まわりの人に協力してもらって、ちょっとお休みをしたり、気晴らしをするのは良い事なのです。

子どものことばの発達に遅れを感じた時や障害がある事を告げられた時、家族はとてもショックを受ける事と思います。
けれども、障害があるからといって、不幸になるとは決まっていません。
どんな子どもにも可能性はあるし、プラス思考で考えていく事によって、人生そのものが良い方向に変わっていくのではないかと私は思います。