最近すっかりはてなをさぼっている私ですが、何か思う事を文章にしてみたいという気持ちがないわけではありません。
そんななか、「そういえば…」と、思い出したのがここの日記です。
いま1度ここの日記を見直し、この場でどうでもいい事を思いつくまま書いてみるのもいいんじゃないかと思いました。
思いつくままというか…
実は、ずっと前から思っている事があって、それについて書きたいなと思ったのです。
本好きの人、本を読んでいて、しばしば「なんて凄いんだろう✨」と、思える描写に出会う事はないでしょうか?
私にはそんな、凄いなあ✨と思う、ずっと心に残る描写がふたつあります。
ひとつは「オズのチクタク」という本の中で、
“ベッツイは空を見ていませんでした。
ポリクロームの顔を見ていたのです。
…という、文章です。
これは一見、普通の文章だけど、実はベッツイという女の子の心の中を表している描写なのではないかと私は思うのです。
ポリクロームは虹にある宮殿に住んでいる妖精です。
虹が出た時に地上へ降りてきて、遊んでいるうちに虹が消えて帰れなくなってしまう事が度々あります。
ベッツイ達とポリクロームが出会ったのもそんな時です。
一緒に旅をする事になり、冒険をして、すっかり仲良くなった頃に、再び虹が現れ、ポリクロームが虹の国に帰る事になった……
そういうお別れの場面です。
一緒に旅をしていた他のみんなは空を見て虹が出るのを待ちます。
でもベッツイだけは、ただじっとポリクロームの顔を見ているのです。
そして、友達が帰ってしまってから「ポリクロームが行っちゃって、あたし、すごく悲しいわ」って言います。
そのあと、「でもさ、あのひとは、お姉さんたちと空にある宮殿にいたほうが、ずっとしあわせよね」と続けるのです。
ポリクロームが帰ってしまうのを待ってから自分の気持ちを吐き出す…ほんとうは寂しくてたまらないのに、友達には寂しさを悟られないようにする…そんな気遣いをするベッツイの複雑な気持ちを、描写っぽくないさりげない文章で表すのが凄いなあ✨って思いました。
そしてもうひとつは「くちびるに歌を」の、少女達が合唱を始めるときの、
“さざなみのように声がひろがった
それは声というよりも、あたたかい水のようだった。……”
と、いう描写です。
これ凄い✨って思うのは私だけかなあ…と、思わなくもないけど、やはり凄いと思うのです。
私もこの小説の主人公のように中学では合唱部でした。
それで、言われて見れば皆で声を合わせて歌い始める瞬間って、何かゾクゾクするような、感覚があるなあと思ったし、その後に続く誰のものでもない歌声になるっていうのも確かにそんな感覚だった、と、この小説を読んで思い出したのです。
それに「お湯」ではなく「あたたかい水」って表現するところもなんか凄いなあ✨って…。
作者の乙一さんも合唱やっていたのかな?それとも合唱を聴いてるときにそう感じたのかな?なんて、いろいろ考えてしまうけど、いずれにしても「合唱」と「あたたかい水」という、全く無関係のものを組み合わせて読み手にその感覚を……、しかも五感に訴えかける形で伝える才能って、ホントに凄いなあと思ったのです。
このふたつの描写が私の心の中にずっとあり、ことある事に「凄いなあ✨」って、思い出したりするのです。